花粉が舞う春先や風が冷たい冬場は、部屋の窓を開けるのが嫌になりますよね。
しかし、部屋を締め切っていると二酸化炭素(以下CO2)濃度が上昇し体に悪影響を与える恐れがあるため、部屋の換気は不可欠といえます。
そこで注目したいのが、窓を開けずに換気する方法です。
これなら花粉の季節や寒い冬でも、きれいな空気を取り込めるので、知りたい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、窓を開けずに空気を入れ替える方法をわかりやすく解説します。
この記事の筆者:「うどまる」
沖縄出身。建設業とトラックドライバーを経て、2021年よりブロガー兼Webライターとして活動中。
窓を開けずに空気を入れ替える方法とは?

現代の住宅やオフィスビルでは、窓を開けることなく室内の空気を清浄に保つ技術が進化しています。
特に花粉症シーズンや大気汚染が深刻な都市部、あるいは防音や防犯を重視する場面では、窓を閉めたままでも効率的に換気できる仕組みが求められています。
また、高層マンションやセキュリティ上の理由で窓の開閉が制限される環境でも、室内の空気質を維持することは健康面で非常に重要です。
窓を開けずに空気を入れ替える方法はおもに以下の4つがあります。
①24時間換気システムを導入する
②扇風機やサーキュレーターで換気する
③ドア下ガラリ&浴室換気扇を活用する
④空気清浄機を使う
①24時間換気システムを導入する
窓を開けずに換気する方法のひとつに24時間換気システムがあります。
このシステムは、高気密・高断熱の住宅が普及する中、建材や家具から排出される化学物質による空気汚染や結露によるカビなどを防ぐため、2003年の建築基準法で義務化されました。
24時間換気システムの種類 | |
---|---|
第一種換気システム | 給気と排気の両方にファンを設置。 室内外の空気を機械的に制御。熱交換機能付きが主流。 |
第二種換気システム | 給気側のみにファンを設置。 室内を正圧にして隙間から自然排気。 |
第三種換気システム | 排気側のみにファンを設置。 室内を負圧にして給気口から外気を取り込む。 |
第一種換気システムは給気と排気の両方にファンを設置し、コントロールが最も精密な方式です。
特に熱交換機能を備えた第一種熱交換換気は、排気される空気の熱を給気に移すことで省エネ効果に優れています。
冬は暖かさを、夏は涼しさを室内に残しながら換気できるため、光熱費の節約にもつながります。
第二種換気システムは給気側のみにファンを設置し、室内を正圧(外より圧力が高い状態)にして隙間から自然排気を促します。
設備費が比較的安価で施工も簡単ですが、湿気がたまりやすいというデメリットがあります。
第三種換気システムは排気側のみにファンを設置し、室内を負圧にして給気口から外気を取り込みます。コスト面で優れていますが、熱ロスが大きいため省エネ性に劣ります。
これらのシステムはいずれも窓を開けずに計画的な換気を実現し、室内のCO2濃度や湿度を適切に保ちながら、PM2.5などの有害物質も低減できるため、健康的な室内環境づくりに不可欠な設備となっています。

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②扇風機やサーキュレーターで換気する

扇風機やサーキュレーターは、窓を開けることができない状況でも室内の空気を循環させる効果的な方法です。
これらの機器は直接外気を取り入れるわけではありませんが、室内の空気の滞留を防ぎ、温度や湿度のムラを解消することができます。
特にサーキュレーターは強力な風量と指向性の高い気流を生み出すことで、部屋の隅々まで空気を行き渡らせる効果があります。
たとえば壁や天井に風を当てると、空気の循環経路を作り出し、室内全体の空気が効率的に動きます。
また、複数の扇風機やサーキュレーターを組み合わせる方法も効果的です。
例えば、一台を窓の方向に向けて設置し、もう一台を部屋の奥から窓方向へ風を送ることで、室内の空気の流れを作り出すことができます。
部屋に換気口がある場合は、その付近に設置すると換気効率が向上します。
ただし、これらの機器は室内の空気を循環させるのみで、新鮮な外気を取り入れる機能はありません。
そのため、定期的に窓を開けるなど、他の換気方法と組み合わせることが必要です。
③ドア下ガラリ&浴室換気扇を活用する

ドア下ガラリと浴室換気扇を組み合わせることで、窓を開けずに効率的な換気が可能です。
これは24時間換気システムの第三種換気システムに該当します。
ドア下ガラリとは、ドアの下部に設置される通気口のことで、室内の空気の流れを確保するための重要な役割を果たすものです。
一方、浴室換気扇は浴室の水蒸気を排出するだけでなく、回し続けることで家全体を換気することもできます。
1.浴室のドアを閉め、浴室換気扇を稼働させる
2.新鮮な空気を入れたい部屋のドアを閉める(ドア下のガラリや隙間は確保する)
3.部屋全体が負圧になり、窓の隙間や換気口から外気が自然に流入する
4.流入した空気は各部屋のドア下やガラリを通って移動し、浴室換気扇から排出される
この換気方法は、住宅の構造上、全室に窓がない場合や防犯上の理由で窓を開けられない夜間、また花粉症シーズンには効果的な換気方法です。
ただし、浴室換気扇の能力には限界があるため、広い住宅では十分な換気量を確保できない場合があります。
④空気清浄機を使う

空気清浄機は、内部のフィルターで花粉やハウスダスト、PM2.5などを捕捉し、きれいな空気を作り出します。
また、最近のモデルはウイルスや有害物質の除去能力も向上し高性能です。
しかし、CO2は除去できないので、完全な換気の代わりにはなりません。
空気清浄機の効果を最大化するためには、設置場所を壁から離し、吸排気口が遮られないよう注意しましょう。
また効果を維持するため、まめにフィルター掃除をする必要があります。
可能な限り短時間の換気と組み合わせることで、より快適な室内環境を実現する工夫が必要です。
室内の空気質と健康リスクを数字でチェック

空気は目に見えないので、今の部屋の環境を判断しづらいものです。
そこで、
- CO2濃度
- 湿度
- VOC(揮発性有機化合物)
といった数値をもとに室内の空気質を判断するのが重要です。
これらの数値をチェックしながら換気と空気清浄機を適切に使えば、健康リスクを抑えつつ住宅の寿命も延ばせます。
理想のCO2値は1000ppm以下
室内のCO2濃度は、呼吸で出る見えないゴミのようなものです。外気のCO2はおよそ420ppm 前後ですが、ドアや窓を閉め切ったまま仕事や勉強を続けると1000ppm を超える可能性があります。
研究では、この1000ppm を境に脳の酸素供給が下がり、集中力が低下し、強い眠気を感じやすくなると報告されています(参考サイト:換気の時間)。
そのため、部屋のCO2濃度は常に1000ppm以下を保つことが重要です。
- CO2モニターを机に置き、数値が1000ppmを超えたら窓を開けたり換気扇を回したりする
- 冬や花粉シーズンで窓を開けにくいときは、換気機能付きエアコンと空気清浄機を組み合わせ、室内の空気を循環させながら外気を少しずつ取り込む

「空気がこもる=酸素が減る」と覚えておくと、こまめな換気の大切さが実感できます
高湿度・VOCが住宅劣化を招くメカニズム
湿度が高すぎる室内では、結露やカビが発生しやすくなり、住宅のクロスや木材がわずか数年で傷むことも珍しくありません。
特に相対湿度が 65 %を超えるとカビ胞子が急増し、ハウスダストの温床になります。
さらに、塗料や接着剤から発生するVOC(揮発性有機化合物)が空気中に溶け込み、においや頭痛の原因になる場合もあります。
このように高湿度の状態が続くと、住宅にも人間にも悪影響が出るため、適度な湿度を保つことが重要です。
リスク要因 | 目安となる数値 | 主なトラブル |
---|---|---|
湿度 | 40〜60 %が快適ゾーン | 65 %超でカビ・ダニ急増 |
ホルムアルデヒド | 0.08ppm 以下が推奨 | シックハウス症候群 |
- 除湿機+換気扇の同時運転で湿気を外気へ逃がす。
- 活性炭入り空気清浄機を併用してVOCを吸着し、においを抑える。
- クローゼットなど閉め切りがちな場所は、小型送風機で空気を巡回させる。
空気・換気・空気清浄機の三拍子をそろえることで、室内の空気環境を守りながら住宅を長持ちさせる効果が期待できます。
空気清浄機の選び方

空気清浄機はどれを選んでも同じと思われがちですが、部屋の広さや使い方によって最適なモデルは変わるため、選ぶポイントをしっかり抑えることが重要です。
ここでは、購入前に必ずチェックしておきたいポイント5つを紹介します。
①適用床面積と CADR を確認しよう
空気清浄機を選ぶ第一歩は、部屋の広さに適したものを選ぶことです。
JEM1467(日本電機工業会規格)の基準をもとに「適用床面積」がカタログに出ているので、それを目安にしましょう。
JEM1467とは?
一般社団法人日本電機工業会規格が定めた家庭用空気清浄機の性能測定に関する規格。
おもに集じん性能や脱臭性能などを評価するために使われている。
空気清浄機では、自然換気1回/時間の条件において粉じん濃度1.25mg/㎥の空気の汚れ(ニオイ・菌・花粉)を30分でビル衛生管理法に定める0.15mg/㎥まで清浄できる部屋の広さを基準にしている。
各メーカーによって違いはありますが、基本的には実際使用する広さよりも余裕のあるものを選びましょう。
適用床面積というのは、あくまでも「30分で基準値まで清浄できる広さ」ということなので、十分な効果を得るには1/2〜1/3の床面積ぐらいで考えましょう。
例えば 10 畳のリビングなら、30 畳対応モデルがおすすめです。
また、JEM1467のほかに、米国家電製品協会(AHAM)によって規定された規格「CADR(清浄空気供給率)」があります。
こちらは「推奨フロア面積」を基準にしており、以下の計算式で算出されます。
推奨フロア面積 = 煙 CADR 値 x 1.55
CADRの算出基準
天井高約2.4mの空間で1時間に1回の自然換気をし、継続的に定常状態で煙粒子の80%までの減少率と、1時間あたり4.8回空気をきれいにできる要件を基準に算出。
一概に比較は難しいですが、世界基準のCADR規格を取得しているモデルなら「推奨フロア面積」で、JEM1467規格なら実際の床面積の2倍〜3倍程度のモデルがおすすめです。
②フィルター性能で選ぶ|HEPA・活性炭・光触媒

花粉や PM2.5 を取り除きたいなら、HEPA フィルター 搭載モデルが基本です。HEPA は 0.3 µm の粒子を 99.97 %以上捕集する性能が規格で保証されています。
タバコ臭や VOC を減らしたい場合は、活性炭フィルター 付きだと脱臭効果が高まります。
キッチンが近い室内では揮発性の油煙が混ざるため、プラズマ放電や光触媒で分解するタイプも候補に入れると安心です。
また、複数のフィルターを組み合わせたハイブリッド構造なら、外気を取り込んだ後の細かな臭いまでフォローできます。
③ランニングコストとフィルター交換費を比較
本体価格が安くても、フィルター交換が年に2回必要となると維持費がかさみます。購入前に 「フィルター寿命 × 交換用フィルターの価格」 を試算し、5 年間を目安にどのくらいのコストになるかを確認しましょう。
最近はフィルターを月額課金で定期配送してくれるサブスク型も登場しています。住宅全体で24時間稼働させる予定なら、電気代も忘れずにチェックしてください。
④静音モードの有無と騒音レベルをチェック

寝室や在宅ワーク用の書斎に置く場合は、運転音が静かな30dB〜50dB 程度がおすすめです。騒音レベルは風量に比例するため、適用畳数に余裕がある機種を低速運転させるほうが静かに使えます。
また、ファンの回転バランスが悪いと共振音が出やすいので、口コミで「耳障りな低音が少ない」などと評価されているモデルを選ぶと安心です。
⑤CO2・PM2.5 センサー連動で自動運転するモデルを検討
最近の空気清浄機は、CO2 や PM2.5 のセンサーを内蔵し、数値に合わせて風量を自動調整するモデルが増えています。これにより、室内空気を常に最適な状態に保ちながら電気代とフィルター寿命を節約できます。
換気の悪い時間帯に外気を導入するときは、センサー連動で強運転に切り替わる機種が便利です。
スマホアプリと連携して数値をグラフ化できるタイプなら、住宅内の空気質変化を可視化できるため、家族の健康管理や換気タイミングの判断にも役立ちます。
部屋タイプ別|窓開け不要の配置

換気不足を感じやすい季節でも、部屋の特性に合わせて空気清浄機を置くだけで室内空気の質は大きく変わります。
ここではリビング・寝室・在宅ワーク部屋という三つのシーン別に、窓を開けずに外気を取り込みながら空気の流れを整える配置テクニックを紹介します。
リビング:壁際に大風量+天井ファン
広めのリビングでは、壁際に大風量タイプの空気清浄機を設置することから始めましょう。給気口をリビング側、排気口をキッチン側に配置すると、空気の通り道が一方向となり、室内の汚れを効率よく押し出せるようになります。
天井ファンやシーリングファンを低速で回転させると、空気清浄機から送り出されたきれいな空気が部屋全体にムラなく行き渡ります。
CO2モニターをテレビ横に設置し、1000ppm を超えたタイミングで空気清浄機を強運転に切り替えましょう。そうすることで快適さが長続きします。
配置のコツ
・空気清浄機は家具から1メートル以上離して配置
・天井ファンの低速運転で部屋全体の空気を穏やかに循環
・CO2濃度800ppm(推奨基準)〜1000ppm(建築基準)を目安に風量調整
寝室:ベッド頭側に清浄機+高所排気
睡眠中は呼気で CO2が急上昇するため、ベッドの頭側に空気清浄機を配置し顔の周辺に新鮮な空気を届けましょう。
排気については、クローゼット上部など天井近くの換気口やエアコンの排気ダクトに集約することで、暖かい空気が自然に上昇しながら流れていく仕組みを作れます。
騒音が気になる場合は、30dB 以下の静音モードで常時運転し、就寝前10分ほどの強運転でCO2と湿気をリセットしておくと快適に休むことができます。
配置のコツ
・清浄機はベッドから50cm程度離し、頭部と同じ高さに設置
・30dB以下の静音モード(ささやき声レベル)で睡眠を妨げない運転
・就寝前の短時間強運転でCO₂濃度を1000ppm以下にリセット
在宅ワーク部屋:机下サーキュレーターで頭まわりに循環空気
書斎やワークスペースでは、デスクの足元に小型サーキュレーターを配置し、ドア下のすき間から入る室内空気を自分の頭方向へ送る方法が効果的です。
加えてCO2センサー付き空気清浄機を部屋の対角線上に設置し、数値に応じた自動風量調整で電気代も節約できます。
長時間の集中作業で CO2が1000ppm を超えた際は、サーキュレーターを高めの角度に切り替え、5分ほどの強運転で頭のぼんやり感を解消しましょう。
配置のコツ
・デスク下のサーキュレーターで室内空気を効率的に循環
・24時間換気システムと連動した室内空気の活用
・CO₂濃度1000ppm超過時の短時間強運転で集中力維持
あなたの家を「花粉・ウイルス知らず」の安全基地にしよう

今回ご紹介した換気+空気清浄機の適切な配置により、外の空気環境に左右されることなく、一年中クリーンで快適な室内空間を手に入れることができます。
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